注目度の高い粒子線治療
注目度No1 切らずにがんを治す粒子線治療
X線やガンマ線などの放射線は、従来から検査や治療に用いられており、近年、がんの再発予防や根治のための治療に用いられることがふえています。粒子線とは放射線の一種で、がん細胞を狙い撃ちし、がんの根治を目指す最先端の放射線治療です。
がんを標的に線量のピークを定めることができるのが特徴
放射線治療では、放射線をがんなどの病巣に照射することで、DNAに作用して細胞分裂を妨害し、がん細胞を死滅させます。
X線やガンマ線など従来用いられてきた放射線は、照射後、体内に入ると徐々に線量が減少していきます。そのため、体の奥にあるがんでは治療が難しかったり、がんの前後にある正常な臓器や組織にもダメージをあたえてしまうという問題点がありました。
一方、粒子線は、照射されて体内に入っても、最初は線量が少なく、エネルギーが停止する直前に最大の線量となるという特徴をもっています。この線量のピークをがん病巣に合わせて調節することで、がんのみを叩くことができるのです。
実施医療機関が限られ、費用が高額になるのが難点
粒子線治療には、陽子線や炭素イオン線を用います(図)。医療用の専用加速器を使って、陽子や炭素イオンを光速の60~80%まで加速するため、巨大な専用施設が必要になります。粒子線治療のデメリットとしては、実施している医療機関が限られ、治療費用も高額になることが挙げられます。
粒子線治療のメリット
- 早期であれば、がんの根治が可能
- 従来、治療困難とされたがんに適用となる場合も
- 照射による痛みがほとんどない
- 手術と比較して、合併症のリスクが少ない
- 他の放射線治療と比較して、がん周辺の臓器・組織への影響が少ない
- 体に負担が少ないので、高齢者も受けやすい
- 治療期間が短く、社会復帰がしやすい
粒子線治療のデメリット
- 実施している医療機関が限られる
- 治療費用が高額になる
- 適応症が限られる
各放射線の生体内における線量分布
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 量子医学・医療部門QST病院HPより引用して改変
重粒子線治療
がんの重粒子線治療は、わが国で開始された最先端の粒子線治療です。わが国の治療実績は世界的にも多く、今後も治療の進歩、拡大が期待されています。
適応症
肺・縦隔腫瘍、消化管腫瘍、肝胆膵腫瘍、泌尿器腫瘍または転移性腫瘍(いずれも根治的な治療法が可能なものに限る)等
従来の放射線の2~3倍の威力
重粒子は、電子より重い粒子(原子核)の総称で、重粒子線治療では、粒子線のなかでも炭素イオン線を用います。重粒子線のがん治療に対する効果は、従来のX線やガンマ線、陽子線の2~3倍といわれています。そのため、通常の放射線治療では効果が得られにくいといわれるがんにも適応となるケースがあります。
照射は1日1回で数週間程度が主流
複数の精密な検査のうえ、適応と判定された場合、一定の準備を経て照射が行われます。治療部位や進行度などによって、照射回数が定められており、1日1回の照射を1週間に5回、主に1~5週間かけますが、多くは3~4週程度となっています。1回の治療時間は数分~数10分(照射自体は2~3分)です。
重粒子線は、より効果的で負担の少ない照射法の研究により、例えばⅠ期肺野末梢型肺がんに対しては、少ない照射回数で十分な効果が得られるようになり、2016年から先進医療として、1日1回、計4回照射が行われています。
さらに装置の小型化や、陽子線で用いられているあらゆる角度から照射が可能な回転ガントリーの臨床研究など、より安全で有効な治療法の研究開発が続けられています。
※重粒子線治療のうち、2016年4月より「手術非適応の骨軟部腫瘍」が、2018年4月より「頭頸部腫瘍(口腔・咽喉頭の扁平上皮がんを除く)」および「限局性前立腺がん」が保険診療になりました。
2022年4月より、「大型の肝細胞がん、肝内胆管がん、局所進行膵がん、大腸がん術後局所再発または局所進行子宮頸部腺がんにかかるもので、いずれも切除不能のもの」は保険診療となりました。
2024年6月より、「早期肺がん(Ⅰ期~ⅡA期)、大型の局所進行子宮頸部扁平上皮がん、婦人科領域悪性黒色腫にかかるもので、いずれも切除不能のもの」は、保険診療となります。
詳細情報(サイト内検索結果)
陽子線治療
世界で最初に米国で行われた粒子線治療が陽子線治療であり、粒子線治療のスタンダードといえます。重粒子線治療より施設数が多く、費用も少し安価になっています。
適応症
頭頸部腫瘍(脳腫瘍を含む)、肺・縦隔腫瘍、消化管腫瘍、肝胆膵腫瘍、泌尿器腫瘍、乳腺・婦人科腫瘍または転移性腫瘍(いずれも根治的な治療法が可能なものに限る)等
がんをピンポイントで叩く
陽子線治療は、陽子線を用いた放射線治療です。水素の原子核である陽子を加速して、がんに照射します。重粒子線同様、線量のピークをがんに集中させることで、がんをピンポイントで叩くことができます。例えば、頭頸部のがんなど、顔にメスを入れたくない、形態や機能を温存したいという場合にも有効な治療法です。
回転ガントリーで寝たまま治療できる
重粒子線同様、治療の適応と判定された場合、一定の準備を経て、陽子線照射に至ります。粒子線治療では、360度あらゆる角度から照射が可能な回転ガントリーという装置での照射が標準的です。これにより、患者は寝たままの姿勢で治療を受けられます。
また、粒子線治療では、病巣を正確にとらえるため固定具などを作成しますが、固定具を用いないスポットスキャニング法や、呼吸同期照射法という、呼吸によって動く臓器を正確に捉えて照射する方法など、新しい照射法を行う施設も出てきました。
照射回数はがんの部位や進行度などによって決められていますが、1日1回の照射で週5回、2~8週間程度かかります。
※陽子線治療のうち、2016年4月より「小児腫瘍」が、2018年4月より「切除非適応の骨軟部腫瘍」、「頭頸部腫瘍(口腔・咽喉頭の扁平上皮がんを除く)」
および「限局性前立腺がん」が保険診療になりました。2022年4月より、「大型の肝細胞がん、肝内胆管がん、局所進行膵がんまたは大腸がん術後局所再発にかかるもので、いずれも切除不能のもの」は保険診療となりました。
2024年6月より、「早期肺がん(Ⅰ期~ⅡA期)にかかるもので、切除不能のもの」は、保険診療となります。
詳細情報(サイト内検索結果)
●陽子線治療
●陽子線治療(根治切除が可能な肝細胞がん)
●シスプラチン静脈内投与および強度変調陽子線治療の併用療法
重粒子線・陽子線の実施施設(2025年2月現在)
- ① 国立学校法人 山形大学医学部付属病院(山形県山形市)
- ② 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 量子医学・医療部門QST病院 (千葉県千葉市)
- ③ 神奈川県立がんセンター(神奈川県横浜市)
- ④ 国立大学法人 群馬大学医学部附属病院
(群馬県前橋市) - ⑤ 大阪重粒子線センター(大阪府大阪市)
- ⑥ 兵庫県立粒子線医療センター(兵庫県たつの市)
- ⑦ 九州国際重粒子線がん治療センター(佐賀県鳥栖市)
- ① 社会医療法人孝仁会 札幌孝仁会記念病院(北海道札幌市)
- ② 社会医療法人禎心会 札幌禎心会病院(北海道札幌市)
- ③ 北海道大学病院(北海道札幌市)
- ④ 一般財団法人 脳神経疾患研究所附属 南東北がん陽子線治療センター (福島県郡山市)
- ⑤ 筑波大学附属病院(茨城県つくば市)
- ⑥ 国立研究開発法人 国立がん研究センター 東病院
(千葉県柏市) - ⑦ 湘南鎌倉総合病院(神奈川県鎌倉市)
- ⑧ 社会医療法人財団 慈泉会 相澤病院 (長野県松本市)
- ⑨ 静岡県立静岡がんセンター(静岡県駿東郡)
- ⑩ 社会医療法人厚生会 中部国際医療センター
(岐阜県美濃加茂市) - ⑪ 名古屋市立大学医学部附属 西部医療センター
(愛知県名古屋市) - ⑫ 成田記念陽子線センター(愛知県豊橋市)
- ⑬ 福井県立病院(福井県福井市)
- ⑭ 京都府立医科大学附属病院(京都府京都市)
- ⑮ 医療法人伯鳳会 大阪陽子線クリニック(大阪府大阪市)
- ⑯ 兵庫県立粒子線医療センター附属神戸陽子線センター
(兵庫県神戸市) - ⑰ 兵庫県立粒子線医療センター(兵庫県たつの市)
- ⑱ 社会医療法人高清会 高井病院(奈良県天理市)
- ⑲ 津山中央病院(岡山大学・津山中央病院共同運用 がん陽子線治療センター)(岡山県津山市)
- ⑳ 一般社団法人メディポリス医学研究所 メディポリス国際陽子線治療センター(鹿児島県指宿市)
<参考>医療機関あて直接支払サービス
大同生命の「先進医療技術料給付特約」にご加入のお客さまは、ご利用要件を満たす場合、治療開始後に先進医療給付金(技術料と同額)を大同生命から医療機関に直接お支払いするサービスがあります。
【主なご利用要件】
- 先進医療が「重粒子線治療」「陽子線治療」であること
- 治療開始前であること
ご利用にあたっては、事前に大同生命にお問い合わせください。